導入の背景・課題
ブレードサーバーのハードウェア保守が2018年8月に切れるため、SBSリコーロジスティクスでは2017年からリプレースを検討していた。同社がリプレースに求めたサーバーの要件はクラウドだ。同社は以前からオンプレミスでの運用・保守・メンテナンスにかかるリソースやコストを負担に感じており、今回はオンプレミス以外の方法でリプレースしようと考えていた。
クラウドを要件とした場合、パブリッククラウドかプライベートクラウドの選択肢がある。世間ではパブリッククラウドに注目が集まっていたが、同社が選択したのはプライベートクラウドだった。「理由の1つはセキュリティの部分です。契約しているお客様のデータをサーバーに保管していますので、パブリッククラウドで運用する場合には利用許可を取る必要があります。許可を取るためには、かなりの時間と手間を要することが予想されました。もう1つは運用コストです。パブリッククラウドの方が安価だと思いましたが、当社の場合は基幹システムとの連携が多く十分なネットワーク帯域を確保する必要があり、実際はプライベートクラウドとさほど変わりません。」と経営企画本部 情報システムセンター システム開発部 システム企画課 課長 田玉 雄一氏は語る。
2005年からシーイーシーがAS/400を
運用・保守
同社は要件をプライベートクラウドに絞り、2017年5月にベンダー2社へ声をかけた。その1社がシーイーシーだった。同社とシーイーシーとの付き合いは、2005年にさかのぼる。当時、同社は外販事業拡大にともない、インフラを運用・保守するリソースが足りなくなっていた。そこで、オフィスコンピュータのAS/400をホスティングサービスで利用することを検討しベンダー選定を行った。AS/400を運用できるベンダーは限られており、唯一、対応可能だったのがシーイーシー。その後、同社はBCP対策などの観点からシーイーシーのデータセンターにICTリソースを集約している。
シーイーシーをベンダーに選定した決め手
ベンダー2社の提案を検討した結果、選定したのはシーイーシーのプライベートクラウド「BizVision PLUS Private」(以下、BizVision)だった。決め手となったのは5つ、その1つは検証による性能評価だ。「サーバーに置いているピッキングシステムは、現場の作業者がストレスなく利用できることが大前提。バーコードをスキャンして1秒以内に次の画面に移行しないと実務では利用できません。検証では、BizVisionは以前のサーバーよりレスポンスタイムが短いことを確認しました。基幹システムがあるAS/400がBizVisionと隣接しており、別途回線を引く必要がないという点も大きく寄与していると思います。」と同情報システムセンター システム管理部 システム運用課 岡田 昌浩氏は語る。
2つ目が仮想基盤の最適化だ。「これまでは物理サーバーが分散しており、かなりのラック数がありました。今回のBizVisionは性能要件を満たしつつ1ラックに集約できており、コンパクトにまとまっています。一般荷主が増加した場合に備え、拡張性という観点から物理サーバーを1台足せばスケーリングできる構成も高く評価しました。」(田玉氏)
「3つ目が24時間365日の監視体制です。当社の止められない物流システムは、24時間365日の運用・監視体制が必須。BizVisionならもしもの障害時、迅速な対応・復旧が期待できます。4つ目はサーバー移行の期間。当初は2018年3月を切り替え完了の目標にしていましたが、シーイーシーはクオリティを保ったまま5カ月前倒しでスケジュールが組めると提案をいただきました。当社としては内部で動かすリソースも圧縮できますから、非常に良い提案でした。」(岡田氏)
「5つ目はコストの部分です。当社は事業継続に対する予算計画の目標値があったため、その数字を目指す必要があります。シーイーシーには大変なご協力いただきました。ほか、ソフトウェアライセンス最適化についてのアドバイスも参考になりました。」(田玉氏)
移行の進捗状況
移行についてはリハーサルを行いつつ、様子を見て影響が少ないサーバーから実行。事前にバックアップを取り、移行当日は更新差分だけで済ますなど、ダウンタイムを極力を短くするための移行施策をさまざまなパターンで行った。さらに、同じデータセンター内というメリットを活かしてネットワーク帯域の最適化も実施した。これにより、2017年10月には時間もコストも最小限に抑えてプライベートクラウドをスタートさせることができた。「プロジェクトを進めるうえで、シーイーシーには週次で細かく進捗状況を注視するマネジメントをしていただきました。おかげさまで大きなトラブルもなく、5カ月も短縮して稼働させることができました。」(岡田氏)
2018年3月にはすべての移行が終わり、ほとんどがプライベートクラウドに切り替わった。現在まで現場からの問い合わせもなく、スムーズな運用が行われている。「そもそもサーバーのリプレースの場合、現場は何も変わっていません。ですから、何も声が上がらないのは良いことと捉えています。なお、BizVision移行後に効果を再評価したところ、当初よりも効果は大きく、トータルで年間数百万円ものコスト減につながりました。当社にとっては、BizVisionへの移行が良い方向へ進んでいると自負しています。」(田玉氏)
今後の展開
田玉氏、岡田氏ともに、BizVisionに移行してからは社内業務に携わっている従業員のサポートという本来の業務に集中できているという。そして何よりも“AIやIoTを使った新しいビジネス価値の創出”に時間を割けられるようになったことが大きい。「やはり、AIやIoTは考えなければいけないところです。サーバーの運用をシーイーシーにお任せすることで、ようやくそこに手が届き始めました。」(田玉氏)
また、両氏ともに今回のBizVisionを「透明性の高いインフラ」と語っている。「もし、お客様からセキュリティに関する外部監査などの問い合わせがあった場合、当社はそれを明確に答えることができます。今後の課題は、イントラネットが前提の現在のシステムをインターネットで公開できるようにすることです。そうなると、今まで以上にセキュリティを考える必要があります。そこはシーイーシーにサポートをお願いしたいところです。」(岡田氏)