会社概要
「音楽をする楽しみ」の普及と発展に貢献する音楽業界の専門商社
1968年に設立した楽譜・音楽書の専門商社である株式会社松沢書店(以下 松沢書店)。楽器店や書店に楽譜や音楽書を販売するほか、楽器店や書店によるECサイトの運営も支援している。システム部の部長を務める山口 昌一氏は「我々は情報システム部門として、インフラ保守管理の役割のほか、社内向けWebシステムのフロント業務、スマートフォンアプリの構築、データベースに蓄積されたデータ分析などを行っています」と語る。
また、同社はネット販売を行う楽器店・書店の裏方としての側面もある。「松沢書店の物流オンラインシステムを活用することで、楽器店や書店は、楽譜や音楽書の在庫を持たずに、ECサイトを立ち上げられます。当社では、常時SKU(Stock Keeping Unit)7万点の在庫管理をしており、商品マスターへの登録作業や商品の発送代行もすべて行っています。注文処理の状況をWebブラウザー経由で確認できるシステムも提供していますので、現場ではバックエンド業務に手間をかけず、フロントエンド業務に注力していただける仕組みです」(山口氏)
さらに同社は、楽譜や音楽書の裏表紙に記されている雑誌コードをスマートフォンで読み取ると、売れ行き状況が一目でわかるアプリも取引先に提供している。このアプリによって、手間がかかる店頭の棚管理が簡便になる。そのほか、売場構成や店頭販促企画の提案、POPや展示資材の制作など、フロントエンド業務を強力にバックアップしている。「当社は創業以来『楽譜はお客さまと楽器店を強力につなぐ戦略的商品である』を信念としています。卸問屋として全国にある楽器店や書店を盛り上げたい・支援したいという思いで、売上を後押しするITツールを積極的に開発・提供しています」と山口氏は語る。このような販促を支援するITツールに加えて、同社の基幹システムなど、松沢書店のさまざまなITシステムは、10台強のサーバー群が支えている。
お客様の課題
サーバー群を管理する手間や停電、台風被害への備え
これまで同社は、サーバー群を自社ビル内のサーバールームに設置するオンプレミス環境で運用管理してきた。このたび、老朽化による自社ビルの建て替えが決定したが、サーバールームの設置自体を見直すこととなった。「当初、自社敷地内に新たにサーバールームを設けようと考えていました。しかし、自社でサーバールームを持ち、サーバー群を管理することにいくつかの課題があることに気付きました。課題の1つとして、2年に一度実施するキュービクル(高圧電源設備)の定期検査が挙げられます。サーバーの電源オフ、再起動の立ち合いに加え、システムの停止による販売店への影響もあります。また、実際には経験していませんが、停電によるシステムの異常停止や、近年大型化している台風による被害も懸念材料でした」と山口氏は語る。このような課題に直面した際、既存システムのネットワーク関連で長年取引があるプレストネットワーク株式会社(以下 プレストネットワーク)から、データセンター活用の提案を受けた。
課題解決への選択
脱炭素に貢献できるシーイーシーのグリーンデータセンターを選択
プレストネットワークの提案を受け、データセンターの活用により前述した課題を解決できると考えた。「データセンターは24時間365日対応のため、キュービクルの検査、停電、台風などの災害に、当社が直接対応する必要がなくなります。また、それまで自分たちで実施してきた設備の状態確認も任せられますし、サーバールームの空調設備を維持管理する費用も不要になります。もちろんランニングコストは発生しますが、自社ビルを建て替えるタイミングはサーバー群をデータセンターに移設するよい機会だと考えました」(山口氏)
データセンターの利用を検討する際にクラウドサービスの利用も検討した。しかし、ランニングコストだけでなく、サーバーシステム自体のクラウド移行にかかる多額のコストや影響が大きいと判断した。「システムのマイグレーションに費用がかかる点や、クラウド移行後にレスポンスが低下した場合の影響を最も懸念しました。クラウド移行後はすぐ切り戻しができませんから。一方、データセンターのハウジングサービスを利用した場合、インフラであるハードウェア設備を物理的に移設するだけでシステム自体は変わらないため、安心感がありました」(山口氏)
シーイーシーのデータセンターを選定した理由について山口氏は次のように語る。「もちろん当社でも他社のサービスと比較・検討しましたが、長年お付き合いしているプレストネットワークからの推薦が大きかったです。データセンターの場所も、いざとなったら駆けつけられる神奈川県内である点も選定した理由の一つです」
プレストネットワークがシーイーシーのデータセンターを推薦する理由は、東日本大震災が発生した2011年まで遡る。当時、計画停電によるサーバー運用に課題があった際、シーイーシーのハウジングサービスを同社が実際に利用し、柔軟でスムーズな対応に信頼を持っていたためだ。
また、シーイーシーのデータセンターがグリーンデータセンターとして稼働していることとも選定理由の一つだ。「政府から温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指す宣言が出されたのがきっかけです。当社も卸問屋としてサプライチェーンの一端を担っている企業ですので、脱炭素への取り組みを行う必要があり、模索していました。今回、グリーンデータセンターの利用による具体的なCO2の削減効果を目にしたとき、その大きさに驚きました」(山口氏)
- 〈対象サーバー〉
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- フロントエンド:10台
- バックエンド:1台
- 〈消費電力〉※1
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- 年間 16,294kWh
- 〈CO2排出量〉※2
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- 全国平均CO2排出量原単位で算出
0.000434(t-CO2/kWh)*16,294(kWh)=7.07(t-CO2)
- 全国平均CO2排出量原単位で算出
- 〈CO2削減効果〉※3
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CO2削減効果は、年間約7t
7t=杉の木約800本が1年間で吸収するCO2を削減したことと同等の効果
※1 サーバーなどIT機器消費電力のみ算出(空調電力を含まない)
※2 環境省・令和五年提出用 電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)より全国平均係数0.000434(t-CO2/kWh)で算出
※3 神奈川第一データセンターは東京電力エナジーパートナー株式会社の「グリーンベーシックプラン」を導入しています。当該施設での電気使用によるCO2の排出量が実質ゼロとなります。
出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/r05_coefficient_rev4.pdf
出典:林野庁「森林はどのくらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141113_topics2_2.html
導入のアプローチ
幅広く豊富な知識と的確なアドバイスに安心感
データセンターへの移行作業に関する検討は、松沢書店、プレストネットワークにシーイーシーを加えた形で進められた。「当社のシステムでは仮想化環境を利用しています。仮想化は、リソースの最適化などの大きなメリットがある一方、物理サーバーに障害が発生した場合の影響範囲が大きくなるリスクもあります。運用面での懸念もありましたが、シーイーシーの担当者から、VMwareの豊富な経験や幅広い知識をもとにした的確なアドバイスがあり、仮想化の有識者が多数いることに非常に大きな安心感がありました」(山口氏)
導入効果
社内の混乱なくシステム移行を完遂、サービスの利用を開始
2023年7月、3社は無事にグリーンデータセンターへの移行を終えた。山口氏、プレストネットワークともにプロジェクトは「大成功」と語る。
「うれしいことに、移行直後の混乱などはまったくありませんでした。サーバーやネットワーク機器が従来の場所から移ったことさえ知らない社員がほとんどではないでしょうか」と山口氏は語る。
移行後同社は、巡回目視監視サービスやCEコール代行サービスといったシーイーシーのハウジングサービスを利用している。「テープ交換などに割かなければならなかった当社の工数を削減できました。以前は年に1回程度、ハードウェアの故障によるメーカーへの連絡や交換対応が発生していました。それもCEコール代行サービスですべて対応してもらえます。マシンのLED点滅などで知る故障だけでなく、気付きにくい故障に関しても定期的に確認してもらえるのは助かります」(山口氏)
将来の展望
グリーンデータセンターの利用によって持続可能な社会の実現に貢献
「現在は新事務所竣工までの仮事務所で営業しており、設備の都合で電力制限がある状態です。それでも影響なく営業を継続できているのはサーバーをデータセンターに移設した効果です。具体的な節電効果とCO2削減量の提示により、社内の環境意識向上にも繋がっています。新事務所では、照明のLED化や節電効果が期待できる空調設備の導入など、さらなる電力削減も推進する予定です。社員を巻き込んだ省エネへの取り組みで、一人ひとりの環境意識改革から、会社全体への取り組みとして浸透していければと思います」と山口氏は語る。
松沢書店は音楽業界を支える専門卸問屋として、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みや、持続可能な社会の発展に貢献したいと考えている。